「看護医療学部」って?“ケアをデザインする”専門職教育の最前線
親: 慶應に「看護の学部」があるって、あまり知られてない気がするわね。
子: そうかも。でも実は、「次世代の看護職」を育てる重要な学部として1998年に湘南藤沢キャンパス(SFC)に開設されたんだよ。従来の「病院で働くための資格取得」にとどまらず、社会を変えるケア、科学で支えるケア、世界につながるケアまで視野に入れている、まさに“看護の革新拠点”なんだ。
親: 看護師になるだけじゃない、ってこと?
子: うん。もちろん看護師の国家試験に向けた実践教育もあるけど、それ以上に「看護とは何か」「人の生と死を支えるとはどういうことか」といった深い問いに向き合う教育があるのが、慶應の看護医療学部なんだ。
教育の特色|「人に寄り添う力」と「科学的思考」を両立
● 看護の専門技術+人間理解+チーム連携
- 解剖学、生理学、病態学などの基礎医学をしっかりと学び、科学的根拠に基づく看護実践へ
- 演習・実習を通じて、観察力、共感力、判断力を鍛える
- 医師・薬剤師・理学療法士・作業療法士などと連携する**“多職種連携教育”**がカリキュラムに組み込まれている
● データで患者を見る力も養う
- データサイエンスや疫学も学び、「直感だけに頼らない看護判断」を実現
- 情報技術を活用した記録・分析・アセスメント能力も重視されており、未来型の看護師像に近づける教育体制
● 倫理・哲学・社会学など、SFCらしい学びも充実
- 「人間とは何か」「尊厳とは」「多文化共生社会におけるケア」など、文理融合型の視点で人を見つめる
- 医療倫理・グローバルヘルス・災害医療など、社会課題と結びついた看護テーマが豊富
子: “病院の中だけ”じゃない。地域も、家庭も、世界も看護のフィールドになるのがSFCの看護なんだよ。
カリキュラムの流れ|4年間で「考える」「動く」「連携する」看護師へ
● 1年次:基礎づくりと看護へのまなざしを育てる
- 一般教養(英語・情報・哲学・心理学)+基礎医学(解剖・生理・化学)
- 看護概論、ケアの倫理、医療の歴史など、“ケアの意味”を深く問う授業が多い
- 学内でのシミュレーション演習を通じて、初歩的な看護技術も習得
● 2年次:実践的スキルと対象理解の深化
- 小児・高齢者・精神・在宅など、対象別のケアを学び、人間の多様性に向き合う
- 疫学・公衆衛生・健康教育など、“予防・地域”の視点も強化
- 夏季休暇には地域看護や海外研修などへの参加も可能
● 3年次:病院・地域での本格的な臨地実習
- 慶應義塾大学病院(信濃町)を中心に、多様な実習現場を経験
- 実習先:内科、外科、小児科、精神科、訪問看護ステーション、地域包括支援センターなど
- 実践の中で「患者さんとの関係性の築き方」や「チーム医療の現場感覚」を体得
● 4年次:卒業研究+国家試験+進路設計
- 看護研究(質的調査やフィールドワークなど)に取り組み、卒業論文を完成
- 国家試験に向けた集中講義と演習
- 大学院進学や企業就職、公務員志望など、個別の進路支援体制あり
子: SFCの看護は、“考えることを止めない看護師”を育ててくれる場なんだ。
キャンパスと学生の雰囲気|SFCらしい“自由×実践”の空気
- 湘南藤沢キャンパスに理工系・国際系・看護系の学生が集まり、学部の垣根を越えて交わる
- 医療職志望の学生と起業志望の学生がコラボして「医療×テクノロジー」のプロジェクトを生むことも
- 看護学部の学生同士も「支え合い文化」が強く、実習や試験を乗り越えるチーム感あり
- 看護系にしては珍しく、男子学生や留学生も一定数在籍しており、多様な視点が飛び交う
親: 看護って“お世話”のイメージが強かったけど、ずいぶん多面的なのね。
子: うん、「支える」という行為の奥深さに、本気で向き合える学部だよ。
取得資格と進路|“専門職のその先”まで考えられる支援体制
● 取得できる主な資格
- 看護師国家試験受験資格(ほぼ全員が取得)
- 保健師国家試験受験資格(希望者のみ/定員あり)
- 養護教諭一種免許状(保健師資格取得後、手続きにより申請可)
● 主な進路
- 慶應義塾大学病院(信濃町)での看護師
- 他大学病院(東京大学病院、順天堂、聖路加、国立がん研究センターなど)
- 地域医療機関、訪問看護ステーション、自治体の保健センター等
- 大学院進学(慶應大学院・東京大学大学院・海外のMPH取得など)
- 一部、医療系企業、ヘルスケア系ベンチャー、国際NGOへ進む学生も
子: 国家資格で“安定”が手に入るだけじゃないんだ。そのあとに「何をしたいか」を考える学部なんだよ。
保護者の方へ|こんなお子さんにおすすめです
- 人の話を聞いたり、誰かのそばにいることに喜びを感じる子
- 医療系に興味があるけれど、単なる資格取得では物足りないと感じる子
- 看護を通じて社会課題や国際協力にも関わりたいという気持ちのある子
- 現場経験だけでなく、リサーチや発信などにも取り組んでみたい子
- 自由な学風の中で、自分で考えながら成長していきたい子
親: “ケアを支える専門職になれる大学学部なのね。安心したよ。
本記事は、早稲田大学国際教養学部に在籍し、進学塾を主宰する筆者が保護者の方に向けて執筆しました。内容は2024年度時点の情報をもとにしています。最新情報は大学公式サイトをご確認ください。
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